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最高裁判所第一小法廷 昭和38年(オ)71号 判決 1965年12月23日

上告人 富士製鉄株式会社

被上告人 名児耶勲

主文

原判決を破棄する。

被上告人の控訴を棄却する。

訴訟費用は原審、当審とも被上告人の負担とする。

理由

上告代理人黒田敬之、同松崎正躬の上告理由第一点および第二点について

昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官マツクアーサー元帥から内閣総理大臣にあてた書簡は、公共的報道機関ばかりでなく、その他の重要産業の経営者に対しても企業から共産党員およびその同調者を排除すべきことを要請した同司令官の指示であること、このような解釈指示は、当時においてわが国の国家機関および国民に対して最終的権威をもつていたことは、当裁判所の判例とするところであり(昭和二七年四月二日大法廷決定、民集六巻四号三八七頁、昭和三五年四月一八日大法廷決定、民集一四巻六号九〇五頁参照)、今日においても右判例を変更すべき必要を認めない。原判決の確定したところによれば、本件解雇は右書簡の趣旨に基づいてなされたものであり、被上告人は共産党の同調者であつた、というにある。それにもかかわらず、原判決は、同書簡の民間重要産業の経営者に対する超憲法的法規範であることを否定し、被上告人に対する解雇を無効と判断した。これは前記判例に違背するものであるといわなければならない。

したがつて、上告論旨は、理由があり、原判決は、その他の上告理由について判断を加わえるまでもなく、すでにこの点において、破棄を免かれず、また、本件解雇が有効であることは前記説示によつて明らかであるから、被上告人の控訴を棄却すべきものとする。

よつて、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横田喜三郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田誠)

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